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日本の「女人禁制」の地 なぜそこに入ってはいけないのか [NEWSポストセブン]

2016/03/25 23:00  Category:引越

2016年3月25日(金)7時0分
 今なお日本には、女性もしくは男性に限って立ち入ることのできない聖域がある。「女人禁制」「男子禁制」と呼ばれる文化的伝統ではあるが、現代においては「性差別」とのそしりを受けることもある。こういったタブーはなぜ生まれたのか? 慶應義塾大学名誉教授の鈴木正崇氏が解説する。
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日本の「女人禁制」の地 なぜそこに入ってはいけないのか
NEWSポストセブン 2016年3月25日(金)7時0分

 今なお日本には、女性もしくは男性に限って立ち入ることのできない聖域がある。「女人禁制」「男子禁制」と呼ばれる文化的伝統ではあるが、現代においては「性差別」とのそしりを受けることもある。こういったタブーはなぜ生まれたのか? 慶應義塾大学名誉教授の鈴木正崇氏が解説する。

 * * *

 女人禁制は、狭義には信仰に関わる慣行で、女性に対して寺社や山岳の霊地、祭場への立ち入りを禁じ、女性の参拝や修行を拒否することであり、山の境界は女人結界と呼ばれた。

 女人禁制の歴史は古く、いわれも複雑だが、大きく分けて次の3つの要因を挙げることができよう。

 1つ目は、男性の修行の妨げになるからという禁欲主義に基づく考え方である。古来山は信仰の対象であり、畏怖の念をもって拝むことが通常で、山頂に登ることは禁忌であった。日本の山岳信仰と仏教の山岳修行が融合して修験道(*1)が普及すると、山は神聖な場所であると同時に厳しい修行の舞台になる。その修行の場から、性的な欲望を掻き立てる存在としての女性を排除しようと考えたのだ。

【*1/山を歩くなどして霊力を身に付けようとする実践のこと】

 2つ目は、「穢れ」という概念に関わる。穢れ(不浄)とは、程度の差こそあれ多くの文化で世界的に見られる観念であり、穢れたものに触れると穢れは伝染するとされている。

 日本では穢れには死を意味する黒不浄、出産を表す白不浄、経血を表す赤不浄の3種類が存在するといわれる。そのうち特に女性は血の穢れである白不浄と赤不浄の2つと切り離せないことから、女性が不浄とされた。こうした穢れや不浄の問題は極めてデリケートな問題であるが、血の穢れを重視する『血盆経』(*2)が室町時代以降に普及して禁忌が強められた。

【*2/仏教の経典の一つ】

 3つ目は仏教の教義と戒律である。仏教には守るべき基本的な規定である「五戒」があり、その中の「不邪淫戒」(=姦淫をしてはならない)が禁欲主義の根拠となっている。

 出家僧であれば「不邪淫戒」は当然守るべき戒であり、寺院や聖域への女性の立ち入りを禁じることは自然の成り行きで、出家という出世間(*3)の行為に付随する当然の帰結であった。もともと仏教には女人罪業観という女性劣位の思想がある。そのため男女の双方に平等に課せられたはずの「不邪淫戒」が女性を排除する方向に突出してしまった。

 こうした要素が相互に、複雑に影響し合い、女性だけが入れない境界である女人結界が生まれる。「結界」は、元々は女人に限らず、聖域空間への立ち入りを禁ずる規定であったが、次第に女性排除の様相を帯びる「禁制」へと展開した。

【プロフィール】すずき・まさたか:1949年東京都生まれ。文学博士。文化人類学者。民俗宗教、祭祀芸能の比較研究、民俗社会を中心とする日本文化論が専門。『女人禁制』(吉川弘文館刊)、『山岳信仰』(中公新書)など著書多数。

※SAPIO2016年4月号
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